クッキングケアサロン・シモンズについて

~水入らずでほっと一息つくことができる居場所に~

20年間、湘南辻堂の地で多くの方々に愛されてきた湘南カレーパン・シモンズですが、私たち夫婦の年令や体調変化の中で、残された老後の時間を心が傷ついた方々のためにできることをしていきたい…という思いに至り、この度クッキングケアサロンを立ち上げることにいたしました。私たち夫婦にできることは…

食べるものを作ること!

生きることに一番直結した食べることを、少しでも自力で楽しんでもらうサロンをやっていきます。自宅を改装した小さなサロンですが、ひとりでも多くの方の心の痛みと悩みを癒す空間となるよう、温かく居心地の良い場所を作りました。ぜひ一度遊びにいらしてください。

普通のことができなくなる怖さを、

自分で考え、できることの幸せに変えていく。

実は、私には、40代半ばに、精神内科で安定剤を処方された経験があります。

薬を飲むと、良く眠れましたが、昼間でもぼんやりしたり、お乳が出たりと副作用が出て、たびたび病院を変え、そのたびに薬が変わり、副作用も微妙に変わりました。

だんだん自分で考えることも、目的を持って動くこともできなくなり、70を超えた母の元に行きました。実家ではご飯も作らなければ何一つしないで、ごろごろして過ごしていましたが、帰るように促され、自分で新幹線の切符を買うこともできて戻ってきました。

 

しかし、自宅に戻ったとたん、わずか数か月離れていただけなのに異常が現れました。閉め切った窓を開けて、喉が渇いたのでお茶を沸かそうと思ったのですが、やかんに水を入れたもののガスの付け方がわからないのです。

ガスがつけられたのは翌日でした。それどころではありません。ご飯もたけません。

魚も焼けません。お風呂も自動なのに心配でお湯が入るまで風呂場で待っていました。

最初のうちは、調理なんてとんでもありませんでした。そんな日々がどの位続いたのか覚えていませんが、毎日、少しずつですが、もともとできたことができるようになってくると、嬉しいだけでなく、頭で考えることと動きが揃い、働きに出ようという意欲にもつながりました。

 

そんなに昔でない過去に、そんな経験をしながらもその後の私は、料理好きで、店でも仕込みはするし、シフォンケーキなど売れ筋商品を一人で作っています。

でも、私にはそんな過去がありました。

人生で、ちょっとお休みする時があったっていい。

少しずつ、自分から踏み出す一歩を大切に。

今までできていたことができなくなったショックは、きっと味わった当事者にしか分からないでしょう。驚きと不安でいっぱいで、自分がどうなっているのかわからず怖かったです。

このような体験をされた方は、私たちのお客様にもいらっしゃいました。

不登校を繰り返していた彼女に、おばさんが、いつも美味しいパンをどっさり運んできてくれたそうです。ずっと無心でむしゃむしゃと食べていたそうですが、ある時、「美味しい」と味覚で感じたそうです。

味覚という感覚で、美味しいという思いが目覚めた彼女は、パンに興味を持ち、パンの専門学校にも通うことができました。現在は結婚もしてパンという好きなことにも出会えていきいきとパン屋で働いています。

自分が体験して、お客様の体験を伺って、わかったことがあります。

 

心の病、精神の病、良くなろうとして飲む薬の副作用で、自分が自分で分からなくなる怖さ。心の病や精神の病は、100人に一人は体験すると言われていますし、認知症もだれにでも起こるということ。

普通にできたことができなくなる怖さは、誰にでも起こることだということです。

親子でも、夫婦でも、疎遠になった者同士でも。

自分でつくった食事をとり、水入らずでほっと一息つくことができる居場所に

「湘南カレーパン・シモンズ」の評判が数年前、ケア付き高齢者住宅を手掛ける企業さんに伝わり、パンの販売に来てもらえないかという声をかけていただきました。

高齢者のために販売する商品は、店で販売している物とは違い、健康を気にする人にも甘いものや油をおさえた商品、食べきれるサイズ、握力のない方にも簡単にちぎれる作りにするなど、考えられることはすべて織り込んだ商品を考案して持っていきました。

ケア付きの恵まれた住宅にお住いのお年寄りが、うちのパンを喜んで買ってくださるのは嬉しいことです。

 

しかし、お部屋にキッチンがついていようとも、三度三度の食事を食堂で食べることを繰り返し、これまで長年たしなんでこられた食事を作ることをしない間に、今から召し上がる食事が何なのかメニューにも興味を持たなくなってしまわれているのを、パンの販売に伺って目の当たりにしました。

 

ケア付き高齢者住宅に入居すると、いろいろなサポートを受けられて一見、恵まれているような生活に見えますが、恵まれているからこそ無くしてしまった機会があるのです。

でも、ちょっと人生の途中でお休みした時間があっても、身近な人からの何らかの働きかけが受けられた人の多くは、だんだん機能回復が見られます。

 

ここに来ていただければ、材料もそろっていて、自分たちで作るキッチンがあり、自分たちでセッティングして食べられる場があります。

親子でも、夫婦でも、疎遠になった者同士でも。

自分でつくった食事をとり、

水入らずでほっと一息つくことができる居場所

「クッキングケアサロン・シモンズ」は、そんな場所にしたいと思っています。